|
農のある暮らし
−恵子さんの百姓の家へ
てきぱきと研修生に指示を出しながら早朝から忙しく立ち働く恵子さん。僕たちの最初の仕事は昼食用のじゃがいもの皮むきである。ボールいっぱいの小ぶりなジャガイモの皮を剥いているとさっそく恵子さんの声が飛ぶ。
「もっとおおざっぱでいいんですよ。野菜くずは、ヤギや鳥のエサになるから」
今日は有機野菜セットの発送日でスタッフのみなさんは野菜の詰め込みに忙しい。毎回の詰め合わせには季節の野菜と「畑ごよみ」が添えられる。「畑ごよみ」は恵子さんとスタッフが日々畑で感じたことなどをつづった記録と簡単な野菜の調理法などを記してある。消費者との距離を少しでも縮めようという恵子さんの考えで始められた。
「大根ひとつとっても、季節によっていろんな品種を作っています。野菜には、とれる時期によってそれぞれにおいしい食べ方があるから、調理方法のお便りを添えて送るようにしているんです」
自然が相手だから、その年によって野菜の出来・不出来がどうしてもでる。今年の里芋は出来が良いのに、サツマイモは不作というように。冬、寒さが厳しければ、多少霜げてしまった野菜を送ることもある。
恵子さんは「『農』のある暮らし」を伝えたいという。食べることは生きるうえでの基本、そして食べものは、土と切り離せない。どの人の暮らしにも『農』と関わりはある。恵子さんのお宅にある紡ぎ車と機械。これを繰っている時は、それまでとは違う緩やかな時間が流れる。衣服を手に入れるという行為も『農』のある暮らしの延長線上にある。
恵子さんは二十年前に、埼玉県の寄居町に移り住んだ。「経済的自立」が強く叫ばれていたころだったが、お金に振り回されているような現在の社会に疑問を持ち、「ならば、お金のかからない暮らしをしよう」と農業に踏み出した。
恵子さんは、今、鳥と羊とヤギと猫を飼い、畑を耕しながら、『農』のある暮らしを楽しんでいる。
|