鉱石ラジオは回路の一部に鉱物の結晶を用いた、電池もいらず、ごく簡単な回路で電波を捉える不思議な受信機。
天然の鉱石がつなぐ自然と科学のメッセージ、聞こえてくる音は何故か懐かしい。
たくさんの道具と作品に囲まれたアトリエで鉱石ラジオを作る。コイルを巻くほどに深まる完成品への思い。
キャッチする電波からは、何が聴こえる?
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| ●添乗記 |
[2004-11-06開講] 報告者●嶋田 |
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おだやかな秋の日差しの下、小林健二さんのアトリエを訪問。扉を開けると使い込まれた道具や工作機械が所狭しと並び、
間接照明によってぼんやりと魅力的な陰影がついた室内に足を踏み入れると、そこにはすでに夜の匂いが漂う工作空間が広がります。
デスクライトが手元を照らす中、まずは指の運動から始めようか、と小林さん。どちらかといえば文化会系的イメージのあった工作が体のストレッチから始まるのには、少々意外な感じ。
しかし、怪我の予防と自分の思い描くイメージのものを指先に作業させるには当然必要な作業なのです。納得。
最初に取りかかるのは、コイル巻き。各自、持参したトイレットペーパーの芯に、丁寧にエナメル線を巻いていきます。
早い人、遅い人、ものすごくキレイに巻く人、そうでない人、いろいろなのですが、それでいて、見た目が聞こえ具合にはけっして比例しないところが鉱石ラジオの面白いところ。
午前中はじっくりとコイル巻きに集中。 一見、単純に見えながら、気を抜くとコイルがバラけてしまうこの根気のいる作業をしているうちに、
ただ、モノを買うだけに慣れた体が少しずつ、モノ作りモードに変化していくのを感じる。
午後は、ボール盤や、バンドソー、ベルトサンダーなどの電動工作機械を使ってみます。
ラジオの本体となる木の板に、ある深さまでの底が平らな穴を開けたり選局するツマミを、丸材から切り出し、表面
を削ったり、機械を使えばあっという間に穴 は開き、切断も容易。電動具は、作業の効率を飛躍的に上げてくれる反面
、怪我をした際のダメージも、手作業とは比べものにならない。 便利さの影に、何かが失われていることを普段の生活ではなかなか自覚できないのですが、こうした作業の現場では、自らの体を担保に便利さを得ていることがシビアに伝わってきます。
作業中、部品のカドを取ろうと紙ヤスリをかけていると、小林さんが声をかけてくる、「ヤスリがけって楽しいよね、つい没頭しちゃって気持ちいい作業じゃない?」
そう、ふと気がつけば暇さえあれば手はたしかにゴシゴシやっているのです。
そんな作業の合間に語られる小林さんの話には、まるで崩れてきた鉱物標本箱から転げだしてきたかのように、たくさんの難しい鉱物の名前や、ココに来なければ一生、
聞くことはなかったと思われるような薬品の名前がゴロゴロと登場。じつはさっぱり内容がわからない時もあるのですが、聞いていて実に楽しく、
小林さんの感じる楽しさが我々にも伝わり、意味がわからないはずなのに分かった気になるのだから不思議。
そんなこんなしているうちに鉱石ラジオは完成。ちゃんと聞こえるかどうか、小林さんにチェックしてもらう間、皆、戦々恐々。そこで、すかさず小林さんは言う。
聞こえるかどうかで言ったら、100円ショップで売ってるラジオのほうがよっぽど良く聞こえる。でも、この工作では、聞こえる聞こえないではなく聴こうとしたことが大事、
そういう意味では、今日は手も動かしたけど心も動かしたはずだよね、と。
電波を聴こうと鉱石上を探る時、それはもしかしたら自分の心の中にも耳をすませる行為なのかもしれない。
すっかりアトリエと同じ暗さになった帰り道、完成した鉱石ラジオを握りしめながらそう感じた一日でした。
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