|
「私は新開孝と申します。じゃあ、そこにアリジゴクがありますから見てみましょう
」講師の方々はいつも開口一番で、私たちを日常から放して興味深い世界へ誘って
くれます。
木や花のことを勉強する講座はちらほら見かけますが、虫のことを勉強する機会は余りありません。
今回つくづく感じたのは、虫が分かると生態系のシステムがずいぶんとキメ細かく見えてくるということ。
草木や虫の一種ずつが俄然、存在感を持ち始めます。太陽と水と土が植物を育てやがてそれが土に還るという話は感動的でダイナミックですが、
話がいささかロングスパンで手に余る大きさでもあります。そこへいくと
「この虫、結構カワイイ顔をしてますよね。この虫はこの木の実を食べて、この葉をくるりと丸めて蛹となり、そして羽化して蝶になり、今度はあの木の花の蜜を吸って・・」といったシステムの環は「生態系」という言葉より「連繋プレー」という言葉が似合うコンパクトさでもあります。
むしろ、その一つ一つの連携プレーが実に個性に富んでいることに驚かされるし、目の前のさほど大きくもない里山にこうした連携プレーの網が呆れるほど緻密に張られていることに関心させられます。そのため我々は時速100mほどの歩み。余りに見事な出来栄えの膨大なシステムに、芸術作品を目の前にしたような感動を覚えます。
こうした静かな感動の横で、「我、関せず」と言わんばかりにノホホンととぼけた顔をしたキリギリスが一蹴り、ポーンと草むらを跳ねていく。何だか人間がひどく不器用な存在に思えたりしました。
カミキリムシの長い長い触角に、「こんなに長くて邪魔じゃないのかな?」という率直な感想に、
「昆虫というのは物理的に支障のないデザインを可能な限り試してみたという生き物たちなんです」と。
アブラムシのお尻をポンポン叩いて甘露を出させるアリの仲間、ぬいぐるみにしたら売れるのではないかと思わせるシロコブゾウムシの癒し系のスタイル、
ジェット機と比べたYS機のようにゆっくりとちょっぴり重そうに飛んでいくキボシカミキリ、エノキの葉裏を丹念に見て見つけたゴマダラチョウの幼虫は思わず吹き出してしまうほど愛らしい童顔だったり、
蝶の鱗粉はレインコートでもありクモの巣にくっつかない防護策だったり、朽木の回りに佇むキバチは産卵管を朽木にグサリと差し込んで中の幼虫に卵を産みつけることができたり、
虫を観察する人たちには葉っぱの上の鳥の糞痕が目の付け処だったり、挙げたら切がないのですが、たくさんの虫たちと出逢い、その話を聞かせてもらいました。
帰りに小さな虫の図鑑を一冊入手。虫についての「なぜなぜ?」知的好奇心の暴走はしばらく続きそうな予感がします。
この講座は季節を変えて開催してみたい講座の一つです。
新開さんは毎日虫日記を自身のホームページ「新開孝の昆虫写
真工房」に更新し続けています。 虫についての疑問質問にも許す限り答えてくださりそうです。ぜひ訪問してみて下さい。
|