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[海外へ]クイーンシャーロット諸島へ 説明会
太古、アジアからベーリング海を渡った北米インディアンの諸族のひとつハイダ族は、 大平洋の黒潮がぶつかり霧でおおわれた島々・クイーンシャーロット諸島を拓き、まさに原生自然と共に生きた。大きな存在感をもって動物たちが登場する数々の神話や、 動物と人を縦列させるトーテムは、彼らの豊かな空想力と同時に深遠な自然観を秘め、 今なお人々の心を打ち続ける。
一方、ここ10年、世界各地の博物館へ収奪されたトーテムの帰還や、忘れ去られていくハイダ語の継承など、新たな動きが芽生えつつもある。
ゾディアックという10人乗りモーターボートで、鯨・鹿・熊・オットセイ・白頭鷲・ ワタリガラスが暮らす諸島に点在するハイダの集落跡や、年間1500人のみが入域を許される世界遺産アンソニー島、美しい原生林を巡っていく。とっておきの自然・クイー ンシャーロットへの旅。

 

 

 
 
 
●添乗記 [2004-05-08開講]  報告者●土橋

この夏、7月と8月に「クイーンシャーロット諸島へ」というプログラムがあります。 故星野道夫さん・巨木・モスフォレスト・カナダ先住民・ハイダ族といった言葉に“ピピッ”とアンテナの立つ方には周知の島かもしれません。

5月8日に説明会がありました。現地ブリティッシュコロンビア大学大学院にて比較宗教学を学び、ライフワークとして北米先住民を追いかけている宮田麻未氏(ツアーに同行下さる方。 「カナディアンライフ」というホームページも公開しています。)をお招きし、カナダ先住民のことやクイーンシャーロット諸島に暮すハイダ族について説明を頂きました。
北米先住民と一言に言っても文化も歴史も異なる数種の民族がいて(例えば白樺の革 で作ったバスケットが有名なミックマック族、大平原でバッファローを狩猟するブラックフット族など)、クイーンシャーロットに暮らすハイダ族は主に「サケ」に拠って暮らす人々であること。優れた航海術をもつ交易の民でもあったこと。また、トーテムポールはどんな役割のものであるのかや、 野ざらしで朽ちていくトーテムを彼らの自然観や生命観の上ではどう理解しているのかなど、短い時間でしたが実像をコンパクトに理解させて下さったように思いました。 写真がお見せできないのが残念ですが、 どのような話題が出たのか、ざっとご紹介します。

クイーンシャーロット諸島には主にハイダ族という民族が暮しています。彼らの祖先 は最後の氷河期にアジア大陸からベーリング海を渡って北米に入ったモンゴロイドで あることは知られるところです。ここは黒潮の影響で一年中温暖湿潤。木々の成長も 早く、植林なら80年もすると一人前の大きな木に育つ。つまり自然に恵まれた土地です。ハイダ族はここで主にサケを糧として暮した民族です。宮田さんは「サケの民」 と呼んでいます。「サケの民」ハイダ族が自然に恵まれ、他の民族とは異なる特異な文化を発展させたその「成果 」がクイーンシャーロットにある。

ハイダ族の暮らしにおいて「サケ」はキーポイント。森が海に迫るこの島で、村を構 えた場所も、一年のライフサイクルも、その根底にある自然観も、サケを中心に築か れる。このサケは大きな自然循環の中でも重要な役目を果たしています。毎年、に遡 上してくるサケの一部を食料にします。それはクマやハクトウ鷲も同じ。彼らはそれ をくわえて森の中にひきずって持っていきます。そのおこぼれに森の小動物やバクテ リアが預かる。その糞はやがて森の栄養になって大きな木々を育てる。ハイダの民も この大きな自然の環の中にあることが、現地で村の構えてあるその地勢を見ると手に とるように分かるそうです。

やがて西洋人が北米に移入した訳ですが、カナダとアメリカでは大分様子が違ったようです。アメリカでは移入は農業開拓が目的であった訳ですが、カナダの場合は毛皮が一つの目的でしたので、毛皮を獲る民として先住民の協力は欲しかったようです。 そのため、軋轢が無かった訳ではないのですが、アメリカほど悲惨な戦いはなかった。 一方で、天然痘やハシカといった病気の持込みで先住民の人口は激減しました。

口承文化のハイダ族にとってトーテムポルは、部族や家族の出自を語る伝承の道具 だそうです。拝む対象ではなく、アイデンティティであり部族の象徴のようなもので、 敬意を払う対象ではあります。神話では人間は動物の生まれ変わりということが前提 にありますので、それは動物達を模ったトーテム。香り高い原生の森とざわめく海の音を聞きながら、今また土に還らんとするトーテムを見ていると、自然と「聖なる物」 ということがより本来の姿に近い形で、伝わってくるのが分かると言います。自然に何かを感じるのではないか、と。

今回のプログラムではクイーンシャーロット諸島に渡る前に、ブリティッシュコロン ビア大学(UBC)の人類史博物館や美術館に寄り、保存されているトーテムを見たり 学芸員の解説を受けます。UBCのトーテムの保存は質量ともに世界一だそうですが、そ の所蔵されているトーテムと、島で朽ちていくトーテムを見るのとは全く印象が違う。 ハイダの人々はトーテムが朽ちて無くなることは自然なことと理解し、その一方で自 らが新しくトーテムを作り続けていくことが本来の姿なのだという考え方です。 ハイダの神話に拠って今もトーテムや木彫を作る芸術家もいます。ビル・リード氏がその筆頭で、ブリティッシュコロンビア大学の博物館にもその作品があります。 しかし彼自身、これを芸術とは位置づけていない。

このプログラムではクイーンシャーロットの南部をゾディアックという10人乗りボー トで辿っていきます。伐採の進むクイーンシャーロット諸島の北部と違い、国立公園 に守られた南部です。南部の諸島をボートで訪ね、原生な森を歩いたり、野生動物を観察したりしながら最終的には、最南端にある年間1500年しか入域を許可しないアンソニー島(ユネスコの歴史遺産登録)へと足を伸ばします。

最後に、説明会で出た質問の幾つかもご紹介しておきます。

Q:トーテムはどんな機会に作られたのか。
幾つかの理由があるようですが、富を分けるということが名誉の証であった為、その 部族に富が貯まると部族への還元にその長がトーテムを新しく建てるというのが主流 のようです。あるいは長が亡くなった時の墓標として。その場合は背の低いトーテム がい。他には重大な出来事を記念する為。出自を象徴するため部族間の結婚やあるい は戦の結末についてもトーテムに記したようです。時には悪い意味の物もあるそうで、 お金を貸したけれども返してくれないことを請求する意味で建てるという場合もある ようです。

Q 星野道夫さんの本に、クイーンシャーロットのトーテムはあと20年もすると   無くなってしまうかもしれないと書かれたいましたが、そのようですか?
トーテムは木ですから朽ちます。トーテムは杉の木で作られることが多いようで、比 較的腐りにくい材なのですが、ハイダの人々はトーテムが朽ちて無くなることに特別 な感慨はないようです。古い物がよいという考え方はありません。むしろ、トーテム は新たに建てることができるもの、今わたくしたちは生きているから、また機会があ れば作ればいい、という考え方です。そういった考え方ですので、博物館に所蔵され 保存だけを目的にされたトーテムに対しての方が違和感があり、元の聖地に還そうと いう運動もある。実際に現地に行って、博物館所蔵のトーテムと自然の中の野ざらし のトーテムを目の前にした時に、その意味合いが分かるのではないかと思います。

Q ゾディアックという船はどんな船ですか?船酔いはしますか?
この船は10人乗りのモーター付きゴムボートです。ゴムボートと言っても煙草の火が 付いても破れない強靱な船です。船酔いは考えられますので、出港前に車酔いの薬を 服用するという手があります。海釣りをする方々が使う「アネトン」という船酔いの薬も市販されています。

Q 熊には会いますか?
クイーンシャーロットにも熊はいます。ブラックベアという熊です。グリズリーのよ うな大きな熊はいません。熊は基本的には人間の声がすると逃げますので、ハイキン グ中に見ることはまずありません。熊を見るとしたらボートで移動中に、海岸に出て きている熊を見ることになります。ボートには現地の国立公園のレンジャーも同乗し ますので、見つけるのは彼が一番早いでしょう。もし熊が居たら声をかけてくれます。

 

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