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遠野はたくさんの川に恵まれている。里川と呼ばれ、「日本の原風景」といった言葉
が似合う集落のわきを流れる川から、早池峰山の山奥の渓流など。遠野が盆地である
ため、どの川も明るいという。猿ケ石川、閉伊川、小烏瀬川、荒川、小友川とそれら
の支流へと、初心者から熟練者まで3〜4人のグループに別れ、各々のレベルに見合っ
た川へ出かけていく。遠野の自然の美しさと、この小回りの良さ、そして講師の村田
久さんやお手伝い頂いた岩手の手作りロッドメーカー・カムパネラ(*1)のスタッ
フの方々の面倒見の良さで、毎年続けてご参加下さる方もいる。
村田久さんは雑誌『フライ・フィッシャー』に毎月コラムを担当されており、その
ファンも多い。『イーハトーブ釣り倶楽部』として単行本化し増刷が続いている。時
にニヤリと笑わせ、時にうならせ、釣りは知らなくても自然が好きな人には心底楽し
めるエッセイ集。そのエッセイ同様、村田久さんはお話もうまく、まわりを楽しませ
る芸当も達人の域で、釣りの話は汲めども尽きない。
カムパネラのスタッフの宇田清氏・石川寛樹氏は、フライの技術は抜群で、自然相
手の仕事ならではの敏捷かつ焦らず急かずのリズム感を自然体で見せてくれる。職人
技の講師のキャスティングを見ているだけでも教わることは数多い。
釣果は、「20匹までは数えたけどさ」と満面の笑みを浮かべる方から坊主まで色々
ありましたが、3日間で平均6〜7匹といったところでしょうか。それも夕食の話題
となり話は尽きない。宿のわきの里川でも朝から晩までロッドを振っている方もいる。
川ぞいには、樹上に甘い香りのする白い花がたくさん咲いて、流れは清く、ロッドを
振りながら川を釣り上がっていくだけで何より気分がいい。‘命の洗濯’この上ない。
都市近郊の管理釣り場やキャッチ&リリースには人が多くて、あわれに思う魚も多い。
しかし遠野の、自然のヤマメはまさに宝石。だから、平日の金曜日をどうにか工面
し て休み、働き盛りのサラリーマンがロッドを担いで集まって下さる。
遠野で釣ると、釣りという行為が自然相手だということが再認識できる。それが健全
で豊かだなあと実感する。バック・キャストで木や草に何度フライをひっかけ、やれ
やれとフライを外す回数が多くても、自然の渓流はこういうものだったなと思い起こ
させてくれる。都市近郊の釣り場の、釣るための自然につい慣れ、つい考えが逆転し
てしまいがちだから。 今回は遠野町の隣町の方も参加して下さいました。「山と田圃だけで飽きちゃうで
しょ。」と謙遜の言葉に「いえいえ。そんなことないです。」そう呟くと、私の体の
方が大きくうなずいているような感じがした。
(*1)カムパネラ
岩手にあり、カーボン紙を巻く段階から手作りでロッドを作るフライ・ロッドのメーカー。そのロッドは軽くしなやかで手に馴染みがいい。専用ホームページもありますので、一度のぞいて見て下さい。
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