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春を迎えた白神のブナの森は植物・生き物たちの生命に満ち溢れ、新緑の若葉はうっ
そうとした森の中に若々しい光りを放ちます。そんな白神の森をマタギの工藤光治さ
んの案内で歩く山行。テント場であるマタギ小屋を出発してすぐに15mほどの幅の沢
を渡ることに。なんとここでは川の上に張り渡したロープに滑車がついたブランコに
座って向こう岸から引っ張ってもらい一人づつ沢渡り。スリリングな川渡りに始めこ
そおっかなびっくりだった一行も一人行き、二人行きとするうちに皆さん余裕が出始
め、誰か落っこちないかねなどど冗談もでるほど。沢を渡り終えるといよいよブナや
ミズナラの生い茂る森を登り始めます、ここは工藤さんが何十年か前に薪をとるため
に木を切りだした場所だそう、しかもその後は植林などせずとも20%ほど木を残して
おけばそこから自然にまた元の森に戻るとの話しに白神の自然の生命力を感じる。
マタギにとって春は冬眠から覚めたクマを追う季節。すでに狩猟は終えている工藤さ
んから熊にまつわる様々な話しを聞く。銃がなかった時代の熊猟はマタギが使うナタ
を棒の先につけ槍のようにして突いたという、しかも冬眠中の熊の穴に一人が潜り込
み熊を乗り越えて穴の奥にいってからよいしょよいしょと体を寄せて熊を穴の外に押
しだし、待ち受けた仲間が槍で突くという一見ユーモラスでいてその実、熊との体を
張った真剣勝負の話しを笑いながら聞きつつも往時のマタギの苦労に思いを馳せる。
マタギとは又鬼と書くという。命を決してもてあそぶことなく、山の恵として授かる
動物たちをいたずらに苦しめず、ひと思いにその命を絶つためには心を鬼にせねばな
らない、狩猟のたびに又、鬼になる。マタギ工藤さんの私たちには決して見せること
のない厳しい世界のお話。どうぞ我々を案内する時には鬼にならないでください...
白神山中の濃密な時間はあっという間に過ぎ、気がつけばまた一人づつぶらさがって
の川渡り。テント場に戻ればこれまた楽しい夕餉のひととき。旅先で知りあった仲間
に森のブナも加わって、夜も更けるまで語り合いは続くのでした。
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